国土交通省は、首都直下地震などの災害や2020年の東京五輪の開催を見据えた東京圏での鉄道政策の審議を開始しました。
5月7日に交通政策審議会陸上交通分科会鉄道部会(部会長:家田仁・東京大学教授兼政策研究大学院大学教授)の会議を開き、「東京圏における今後の都市鉄道のあり方」についての答申を、今後15年度まで2年をかけてまとめる方針を示しました。 東京圏を対象とした国交省の現行の鉄道政策は、00年に運輸政策審議会が答申したもので、15年度を最終年度としています。その趣旨は、主に混雑の緩和や速達性の向上などだ。同省は5月7日の会議で、新政策を検討する主な視点を8項目にわたって提示した。引き続き混雑の緩和などを掲げ、さらに地震のリスクや東京五輪の開催決定といった最近の情勢を踏まえた視点を加えています。
東京圏における都市鉄道の今後についての主な検討の視点
(1)災害などのリスクへの対応 ・想定するリスクの例:首都直下型地震、荒川の決壊、沿線の建物火災
(2)快適で安定した鉄道輸送サービスの提供 ・未解決の課題の例:今も残る混雑率が高い区間、複数の路線の相互直通運転による列車遅延の拡大
(3)誰にも利用しやすい都市鉄道の実現 ・具体策の例:駅のバリアフリー化、ホームドアの整備、駅構内での商業施設の整備など
(4)国際競争力強化への対応 ・東京の都心から国際空港までのアクセス時間は、世界の主要40都市中31位に低迷
(5)観光立国への対応 ・アンケートで外国人が回答した日本を鉄道で旅行するうえでの問題 「都内は路線が多く、料金やルートが分かりにくい」 「駅構内に英語の案内表示やアナウンスが少ない。駅員に英語が通じない」 「電車の出発ホームが分かりにくい」 「乗り換えが複雑」 「観光地間を移動できる無料または低廉なチケットが欲しい」
(6)まちづくりやほかの交通手段との連携
(7)環境負荷低減の推進
(8)オリンピック・パラリンピックへの対応 ・観客などの輸送力の確保 ・テロ対策の強化 ・さらなるバリアフリー化の推進 ・訪日外国人の利用環境の改善 ・観戦チケットとIC乗車券フリーパスの一体化 ・観光促進 (資料:国土交通省)
空港アクセスの改善が急務
(4)の空港アクセスについては、京浜急行電鉄京急蒲田駅の改良(2012年10月供用開始)や成田高速鉄道アクセス線の開業(10年7月)で改善が進んだとしながらも、海外の主要都市に比べればまだ劣っていると指摘。都心との距離が遠い成田空港だけでなく、近距離にある羽田空港への速達性も列車の速度不足で不十分だと見なし、アクセス改善が急務だとしています。
(8)の五輪対策としては、東京五輪招致委員会が国際オリンピック委員会本部に提出した立候補ファイルの一部を引用。開催時には都営地下鉄大江戸線など主要な公共交通機関を24時間運行することや、駅の段差解消を20年までに完了することなどを列挙しています。