広島土砂災害、過去の教訓生かせず

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8月20日未明に広島市北部を中心に発生した大規模な土砂災害。同市災害対策本部などのまとめでは、8月26日までに死者63人、行方不明者25人、負傷者が43人に上った。また住宅25棟が全壊、92棟が半壊・一部損壊。245棟の住宅が床上・床下浸水の被害を受けている。ここまで大きな被害となった背景には、宅地化が進んだ区域に、新たに規制をかけることの難しさがある。

1時間に100mmを超える局地的な大雨が引き金となり、土石流が発生。住宅の被害は、市北部に位置する阿武山の山すそに接する区域に集中した。広島県と国土交通省の現地調査によると、市内安佐北区と安佐南区の少なくとも50カ所で土石流が、3カ所でがけ崩れが発生した。市は両区に流れ込んだ土砂量を、50万m3以上と見積もる。

避難勧告を受けて26日時点で1400人以上が避難所に滞在し、長期化も見込まれる。広島市と広島県は24日、被災者を対象に公営住宅の提供受け付けを開始した。計157戸を原則6カ月間、無償で貸し出す。また市は、被災地の周辺に仮設住宅も建設する方針だ。

後手に回った警戒区域の指定

広島県では1999年6月にも、豪雨による土砂災害が発生した。広島市や呉市に土石流139カ所、がけ崩れ186カ所、死者・行方不明者32人、家屋全壊154戸の被害をもたらした。

この災害を教訓として制定されたのが、2001年4月施行の「土砂災害警戒区域等における土砂災害防止対策の推進に関する法律」(土砂災害防止法)だ。土石流や地滑りといった土砂災害の恐れのある地域について基礎調査を実施したうえで、都道府県が「警戒区域」や、さらに危険度の高い「特別警戒区域」を指定する。これらの区域内では、住宅宅地分譲などの開発行為を制限したり、既存建築物の移転を勧告したりできる。

しかし今回被害が大きかった地域のうち、警戒区域の指定を受けていたのは、安佐北区の一部だけだった。広島県内では、土石流やがけ崩れ、地滑りの被害の恐れがある「土砂災害危険箇所」が3万1987カ所に上る。そのうち土砂災害防止法に基づく警戒区域に指定されているのは、4割弱の1万1834カ所にとどまる。

警戒区域の指定には、(1)対象地域の基礎調査、(2)住民説明会、(3)市町村との調整という3段階を踏む。「大きな被害を受けた八木・緑井地区は、2012年から13年にかけて基礎調査を完了した。これから住民説明会を開催する矢先に、被害が発生してしまった」。広島県土木局の出来谷規人砂防課長はそう話す。住民からは指定によって地価が下がることへの懸念などがあり、「理解を得るまで説明会を重ねる必要がある。県内では基礎調査から指定まで早くて1年。通常2、3年かかっている」と、出来谷課長は説明する。

こうした事態を受けて政府は8月24日、土砂災害防止法改正の検討に入った。都道府県知事に警戒区域の指定を促せるように、要件の緩和などを念頭に置いて議論を進める。

広島市は平坦地が限られ、1970年代に町村合併と並行して郊外開発が進んだ。土石流の被害を受けた地域は山すそにあり、市街化区域の境界線間際に位置する。経済成長を前提とした人口増の時代の線引きが、本来居住に適さない場所にも宅地を形成する結果を招いた。人口減少期に入り、どのように市街地を縮小していくべきか──。

今回の災害では、全国の自治体が抱える課題を改めて考えさせることとなったでしょう。

自治体が 発表している情報だけではなく、さまざまな情報から複合的に危険度を判断することをお勧めします。

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